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ダム建設反対と緑の党と欧州委員会

今回は、環境問題です。
一国の政治に、EUがどういう影響を与えうるのかというのが今回のテーマです。

sivens.jpg

フランスで、10月から11月にかけて、連日大きなニュースになっていたダム建設問題です。
まずは、簡単に事件の概要を説明します。

フランスの南西部、タルヌ県にある湿地帯のテスク渓谷というところで、ダムの建設計画がありました。シヴァンス(Sivens)・ダムという名前で、農業用水という名目でした。
最初の計画は1969年、現在の計画の形は1989年からのものです。

反対する地元民や環境保護の活動家は、長年闘い続けてきましたが、今年に入って軍警察が、反対する人々が居座っていたテント・やぐらを、何度かにわたって強制排除を始めました。日本人の中には「成田みたい」という人もいます。

そしてとうとう10月25日、植物学を専攻している学生のレミ・フレスさん、21歳が、機動隊の手榴弾が背中にあたり、即死してしまったのです。これを機に反対運動が激化、パリやトゥールーズでも反対のデモが起こり、逮捕者続出という事態になりました。

毎度のことながら、言いたいことがあるとちゃんと主張して行動するフランス人には関心します。
(国会周辺でのデモ活動について、「単なる絶叫戦術はテロ行為とその本質においてあまり変わらないように思われます」と自分のブログに書いた有力政治家がいたそうですが、頼むから首相にならないでください。世界で日本が極右国家になったと思われてしまいます。日本人はおとなしいけど、言いたいことがあったらデモなどで行動するのは、世界の常識、特に民主主義国家の常識です)

年月が経つうちに、ダムという形での用水そのものの必要性が減じたという問題もあり、まるで長良川の河口堰のような事態になっています。
ロワイヤル環境大臣は、ダムの規模が35パーセント過剰であり、共同利用できる貯水池をつくることを提案、計画の撤退にまでは言及していないものの、代替案を考えると発表しました。ちなみに、個人貯水池は、もうたくさんあります。
緑の党では、官憲の行き過ぎに対して、カズヌーブ内務大臣の辞任を要求する要人があらわれるなど、騒動になっています。

日本も同じですが、国、県、地元の利権、建設会社、農業関係者たちの利益が複雑にからみあっていますので、なかなか難しい問題です。

これがどう欧州連合と関係あるかといいますと、このダムは、2割程度、EUの農業援助が入っているのです。正確には「農村開発のための欧州農業基金」です。他は国や地方自治体などです。このようにEUがかかわってくるのは、全然珍しいことではありません。

建設反対派にとっては、EUの欧州委員会は「思わぬ味方」だそうで。なぜなら、欧州委員会がフランスに対して、EUの環境ガイドラインを侵害しているといって、違反手続き措置を始めるらしいからです。委員会の広報官は、「書類を調査しているところ」で、「まだ違反手続きのための段階には入っていない」と言ってますが。

なんでこうなったかと言いますと。
フランス南西部から選出されたエコロジストのCatherine Grèze欧州議員が、もう2011年から5回にわたって、欧州委員会にこのダム建設に関して、質問をなげかけてきたからです。彼女は54歳、フランスのヨーロッパエコロジー緑の党に所属しています。そして、グローバル・グリーン・コーデイネーションにも所属しています。これは何かというと、2001年にオーストラリアのキャンベラで設立されたもので、一言で趣旨をいうなら「世界の緑の党が団結しましょう」というものです。
彼女は「もし欧州がフランスに対して違反手続き措置を始めるなら、欧州基金は補助金を停止し、計画は放棄されるでしょう」と言っています。

ル・パリジャン紙の情報筋によると、欧州委員会は2013年11月に、フランスに対して「水に関する欧州ガイドラインの要請が、このダム建設によって脅かされていないか」を確認するために、必要な情報を提出するようにすでに求めているそうです。
Catherine Grèze欧州議員はさらに、2月24日にも、13ヘクタールもの湿地帯が破壊されるせいで、欧州の規範に完全に反するのだから、このプロジェクトは維持できないはずだと、欧州委員会に新たな質問をしたとのこと。
10月26日に若い学生が死亡したせいで、政府の判断で建設は停止されています。前述したように、環境大臣のロワイヤル女史は、3人の専門家を現地におくり、規模の調整をはかるか、ダム以外の別の方法をとるかを検討し始めています。

もしこれが日本だったら、時間が経って人々の関心が薄れるのを待って、再びぞろ利権がからむ人たちが建設をなし崩しに再開するでしょう。でも、フランスの場合、国内だけでも政権交代があるし、人々は日本人ほど大人しくないです。さらに加えて、緑の党の議員が欧州規模で訴えるという方法を駆使しています。世界規模だと、たかだかダム一つくらいは、もっと深刻な問題が多すぎて埋もれてしまうかもしれませんが、EU規模なら、十分効果があると思います。

さて、もし今後フランス政府が、EUから欧州委員会の署名入りの手紙を受け取ったら、公けにしなくてはいけなくなるでしょう。違反行為の最初の手続きとは、いわば訴訟の前段階になるわけです。もしフランス政府がEUの満足のいく返事をすぐに返せなかったら、欧州委員会は、EU裁判所にフランスを訴えることになります。ただでさえ難しい問題になっているのに、フランス政府がそんなリスクを侵すのかどうか。
環境の権利に詳しい弁護士によると、「欧州委員会は軽率にこれらの手続きに入ることは決してないので、もし本当にやるとなったら、もうダム建設プロジェクトはおしまいだろう」と語っています。

いつもいつも、国内問題は国内だけ、一国だけで解決し、せいぜいアメリカ様の圧力を利用するしかない日本にとっては、「共同体」ということそのものが理解されていないと、常々感じています。共同体とは何か、どう一国の社会に影響を与えているのか、この記事で少しでも伝わるといいのですが。

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キバナ

日本は既に在特会という極右(というよりももはやネオナチ)と仲良く写真撮っていた人が首相なんですが、世界からはまだ極右国家と見られてないんでしょうか(苦笑)
今の日本ではデモはテロのような発言はしょっちゅうありますからね・・・
もっと酷い発言もいくらでもありますし。嘆かわしいです。まあ何より現首相自身がすごいこといっぱい言ってますからね
本当、ここまで右傾化した日本は記憶にないです
今日のニュースでは朝日新聞本社に記者を殺すなどとの脅迫状が送られてきたとのことで・・・恐ろしい話です



右翼といいますか、対話ができない人が増えているように思います
思考停止というんでしょうか
欧州を見てると皆対話してますもんね



確かに今の日本は外国が日本のことに首を突っ込むな、日本のことは日本が決めるという雰囲気がありますね
勿論皆が皆そうではないと思いますし、広い視野を持っている人もたくさんいると思うのですが
政治に関してはどうもそんな感じですね


日本ってヨーロッパや他のアジア諸国のように民衆自らの手で民主主義を勝ち取ったことがないんですよね
今は一応民主主義国家っぽくなってますがそれもアメリカから与えられたから(今の日本風に言うと押し付けられたから)だけでしかない
だからこそ先の大戦でも、日本が国家として国家の責任を全く問わないままここまできてしまったのかもしれません
なのでここまで極右と右翼が暴走してしまえるのかもしれないですね


まあそもそも一票の格差放置し続けていて、違憲状態の選挙しかできていない今の日本の選挙制度はそもそも民主主義国家なのかという疑問もありますが(苦笑)
未だに地盤、看板、カバンの選挙制度は昭和30年代から何も進歩してない気がします
by キバナ (2014-12-17 03:38) 

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