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欧州連合(EU)はロシアを怒らせてまで、なぜウクライナと連合協定を結びたかったのか

タイトルは、ここ数年来、ずーーーーーっと私の大いなる疑問だった。
あんなにロシアののどもとの国、ウクライナまで連合協定を結んだのでは、ロシアが怒るに決まっているではないか。
なのになぜ、連合協定を結ぼうとしたのか。
軍もないのに、何をやっているのか。

怒涛の日々にやっと一段落がつき、ソルボンヌ大学で教鞭をとっている二人の教授に聞いてみた。
質問は同じである。
「欧州連合は、あれほどロシアが怒ると予測できなかったのか(怒るに決まっているのに)」である。

一人は安全保障の専門家である。
「それは、英語で言うmisperceptionだよ」
「misperceptionですか?」
「そうだ。国際政治の世界へようこそ!」

もう一人は、欧州の歴史の専門家(EU建設含む)で、特にアメリカと欧州の関係を専門にしている。
私が質問を発すると、乾いた声で上向き加減で「ハハハ」と笑い、「それはいい質問だ」といった。
そして、腕を組む形だけど片腕は口元にあて、ちょっと考え「確かに挑発的ではあった」「でも、過小評価していたんだな」と言った。

二人の言い分を総合すると、要するに「まさか、ロシアがあんな反応するとは思わなかった」ということのようだ。
それであんなにEUの政治家たちは右往左往していたのか・・・。

ここで一生懸命、当時のことを思い出してみる。
フランスや欧州では、ウクライナの民主化運動というか反政府運動は、ずっと大きな話題になっていた(確かに極右の運動とも言えた。今でも覚えている。ル・モンドの一面に使われた写真では、人々が立ち上がるデモの写真で、ひるがえる極右の旗に加工がほどこされていた)。でも、日本ではそのニュースは限りなくゼロに近かった。それ関係の私のページは、アクセス数は2桁だったのに、ロシアが侵攻したら、数万単位でアクセス数が伸びて・・・。あのころ私は、ロシア(というかプーチン)が怒るのを予想していただろうか。びっくりはした。予想できたというのはやはり言い過ぎだろうか。でもプーチンの行動は、それほど意外ではなかった。

ちなみに後者の歴史の先生はEUの歴史の担当で、例によって最初の授業ではギリシャ・ローマの話を始めた。まあお約束ともいえるのだが。
そこで私は「欧州の起源はメソポタミアじゃないんですか。なぜギリシャローマから始めるのですか」と質問したことがある。そうしたら「言う必要がないからだ」とのこと。

この先生からは多くのことを学んだ。
良心があるヨーロッパ人が、いつまでも奴隷貿易や植民地主義を糾弾される旧大陸の人間であることで心を痛めているなんて、想像もしなかった。

でも、やっぱり私は欧州は、謝罪と保障が足りない!!!と思っているけどね・・・。
でも、ヨーロッパ人の心に触れた思いがした。
オバマの話をしているときの出来事でした。

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マクロンとルペンのテレビ討論を見て

以下はただの感想文です。最近そんなのばっかりですが。
よかったら読んでください。

ーーーーーーーーー
ルペンとマクロンが残ってから、なんだか社会が陰惨な雰囲気になったような気がする。
国民戦線の新たな党首がネガショニスト(ホロコーストはなかった派=親ナチス)だとか、気に入らないプレスを締め出すとか(メディアが連帯して抗議しました)、「ああ、国民戦線って、本質はナチスなんだな」と思わせるようなことが多かった。

共和党のフィヨンも社会党のアモンも「共和国を守るためにマクロンに投票を」と呼びかけたのに、メランションは何も言わない。大きな批判をあびた。
思想が違うから応援したくないのはわかるが、ナチスが政権とっていいと思っているのかと、私も一気に反感をもった。それまでは、投票権があっても彼には投票しないまでも、好意的に見ていたのに。「彼が今回こんなに投票を伸ばしたのは、極右にいきそうな票をとりこんだからで、だから言えないのか?! あんたはそういう人だったのか?! どんな時でも持論をがなりたてるのが、あなたの魅力だったんじゃなかったのか」と思った。感情的だけど。
結局彼は、誰に投票しましょうと言わないまでも、ルペンに投票するなという発言をして一応収まりましたが。

マクロンに関しては、悪口のほうが流布されすぎのような感じがする。
なんといっても国の問題は、景気の悪さと失業率(と国の借金)。アメリカ風(小泉風?)のサルコジ(現共和党)に託したけどダメだった、それなら社会保障を充実してくれるだろう社会党のオランドに期待したけどダメだった、じゃあどうする? というのが今回の選挙。マクロンは、両者の良いとこ取りをしている候補で、新鮮で若い。批判はたくさんあるが、フランス人は彼の新しさと若さに期待したのだと思う。
イタリアがレンツィ首相(マクロンと同世代)をもったときの、若々しい新しい風を期待した人もいたかもしれない。

私は個人的に、人間マクロンに大いに興味がある。この人は普通なら現共和党にいって不思議ではない経歴なのに、なぜ社会党に入ったのか(生育歴・家庭に関係あるのか、パリ第10大学にいたというところがポイントなのか)。しかもこの人は、敬虔なキリスト教徒なのに(だからたまに宗教臭い)、フランスのライシテ(非宗教性)を尊重している。フランスにしか現れない矛盾の化け物、あるいは見事な融合作品だと思う。

ところで、二人のテレビ討論が行われた。
後半くらいから、ほとんど変なショーを見ているような感じになった。
マクロンの言っていることは賛否はともかくまともなのですが、ルペンが。
この人のいっていることは議論にならないどころか、ほとんど根拠もなくウソも多く正確な知識も乏しく、人々のネガティブな感情に訴えることばかりだから、こうなっても当然なのだけど。
(地方の国民戦線の大会での演説が、フィヨン演説の完璧なコピーだったと、話題になった。お前はトランプ夫人か)。
役者のような激しい身振り手振り、とっさに短い言葉を投げかける、人々の理性ゼロの感情にのみ訴える大仰な、でも全く根拠のない言葉の数々。
なんだかこういう感じの女占い師が、昔日本にいたような、まだ私が子供のころ・・・名前が思い出せない・・・ギボなんとか。調べたら宜保 愛子でした。
見ている最中は、気持ち悪さに吐きそうになりましたが、後になると「そうか、極右ってこういうものなんだな」と妙に感心した。

第一回投票の前は、なんだか奇妙に静かな雰囲気を感じたけれど、二人が決まってからは、奇妙な静けさはまだありながらも、一気に騒々しくなった。
ところが、この討論が終わったら、もはや議論する気も起きないというか、疲れ切って終わった雰囲気というか、そんな感じがする。

ルペン落選は当然にしても、どのくらいルペンに票が集まるのか。
そっちのほうに関心があるように思う。
第一回投票は、第一回で決まると思っている人はいないので、批判票や気分の票も集まる。
でも第二回は真剣だ。
おそらく棄権や白票は増大するでしょうが、どちらかに投票しない人は今は関係ない。後で論議すればいい。
大統領はどちらかがなるのだから。

あの討論を見ても、ルペンに投票する人がどのくらいいるのか。
宜保 愛子が大統領になってもいいと???
私は失業者の経験があるので、失業していると心が荒んでいく気持ちはわかる。
でもあのルペンに投票するほど、フランスがひどい状況とは思えない。
フランスはアメリカと違って失業者でも生きていける。健康保険はしっかりしている。
もしルペンへの得票率が高かったら「そんなに私が理解できないほどひどい状況なのか(移民が集まる地域は別として)」とか「人間も民主主義もうんざり」とか思うでしょうね。

メランションに投票する人は、移民系のフランス人が人数としては中核です。
彼が大統領になることはないでしょう。
極右や極左が大統領になるほど、西欧はひどい状況ではない。
それよりもフランスは、社会党の立て直しのほうが重要だと思う。
アモン候補は、とても良い人物だったと思う。
さすが、負けるとわかっている社会党の危機のなかで出てくるだけあって、党内で人望を得ている、左派思想がしっかりある人物だと思った。
好き嫌いだけで言ったら、私はこの人が候補者のなかで一番好きだった。日本人の判官贔屓かもしれないけど(笑)。

そして、もし極右の本質は変わらないとしたら、実際はこの程度(?)なのに政権をとったことがある歴史の極右政権というのは、どういうことだったのだろうと、詳しく知りたくなった。大戦期に関しては、テレビじゃなくてラジオ時代だったから可能だったのかな、など。

ただ、極右の党首が女性だったことは歴史上ないのではないかと思う。今までもテレビ番組で討論とかはあったのだけどね。いざ決戦投票!いざ命運を分ける二者テレビ対決!と思って周到に準備してパワーアップしたら、ああなった、と。どうも、女が極右の党首になると、宜保愛子になるみたい。これは新しい政治カテゴリーの登場(?!)かもしれない。


社会党の歴史的大敗に感じたこと

それにしても、ここまで社会党が大敗するとは。選挙結果が出る前から「歴史的大敗になるのではないか」と言われていたけれど。従来の二大政党が大きく崩れたのは確かだけど、それでも中道右派(現共和党。シラク・サルコジの党)は一応20パーセント近くとっている。歴史的大敗というほどでもない。オランド大統領は、続投で立候補しなかった第5共和制初めての大統領で、彼がなぜそれほど人気がなかったかという話になる。これから山のように分析は出るだろう。
個人的には、今回のオランド政権がはなはだ人気がなかったのはわかる。でも、それでも私は、彼は国の1年の予算に匹敵する借金ーー日本と違って外国から借りているーーを削減しようと必死だったのだと思う。まじめな大統領だったと思う。派手じゃないし、カリスマ性もない。だから余計に人気は落ちたのだろうけど、実務畑出身だけあって、本当に誠実に国の大問題に取り組んだ人だったと思う。
不思議なものだ。彼が大統領に就任したとき、私は「あんな魅力の感じさせない大統領で大丈夫か。リーダーらしさがまるでない。サルコジは下品で小粒だったけど、少なくとも強さはもっていた。歴代大統領から見ると、かなり劣る」みたいなことを言ったら、オランドに期待した人たち(大統領になったのだから支持者は多かった)の中から「そんな悪口をいうなんて」とお叱りを頂戴したものだ。ところが5年たってみたら、彼らはオランドにも社会党にも背を向けて、むしろ私が彼を評価している。
私はフランス人じゃないし、投票権もないけれど、働いて税金は払っている。だから傍観者というわけではない。(税金払っているのだから、市町村選挙の投票権くらいは欲しいなあ・・・と思っている)。
マクロンも前途多難だと思う。アメリカ風の経済政策ならサルコジが、社会党らしい社会保障政策ならオランドが、すでにやっているのだ。(ただ、アメリカ風の経済政策を試すには、5年は短かったと思う。また社会保障政策だの教育重視だのは、オランドに限らずみんなやっている)。はたして議会の安定もえられないマクロンが、これから本当にうまくやっていけるのか。オランドに失望したように彼に失望する時がもし到来したら、フランスはどこにいってしまうのだろう。

話を元に戻して。。。左の支持者は、メランションにいっちゃったのかな。メランションとアモンを足すと1位になる。そう考えると、EU専門家としてはとても面白い。メランションとアモンの最大の違いは対外政策。つまり、メランションに流れた左派の人たち、つまり今までなら社会党に投票していたであろう人たちは、社会党がもっていたEUビジョンはどうでもよかったということになるのか。うーん面白い。

といっても、私はEU専門家だからそこに注目するけれど、一般的にはポイントはEUじゃなくて、メランションはあの共産党っぽさでしょう。あれがどうしてもダメという人は大勢いる。英国メディアでは「ボルシェビキ」と呼んでいた人すらいた。メランション自体は、いかにも革命闘士(フランス革命という意味ですよ)で悪い印象じゃないのだけど、あの共産主義のような政策はあまりにも非現実的でしょう・・・と思う。EU云々という以前の思想の問題。
でもそれでも、あれほどに最後には支持を集めたのだ。極右と同じほどに。フィヨンやアモンは「共和国を守るために、マクロンに投票を」と呼びかけたけど、メランションは各自の自主投票にしたようだ。

もちろん社会党支持層の票は、メランションだけではなく、かなりマクロンにも行っているはず。
ものすごく単純化した仮説では、社会党に失望して、社会党に入れたくない人は、共産主義っぽさも辞さないでもっと左(メランション)に流れた人、ちょっと右(マクロン)に流れた人、社会党にとどまった人の3つに分かれたのだろう。
中道右派よりも中道左派のほうがもろかった。これは今回、いまのフランスに限った現象なのか、それとも全体的に「左派」にはそういうことがいえるのか。そしてメランションに流れた左派の人たちの世界観(EU含む)はどうなっているのか。そして社会党支持で残った人たちは、どういう考えをもっていたのか。これが私がいま、一番関心があることだ。

今後多くの専門家が分析するだろうから、メディアの報道に注目するとしよう。

(ちなみに私個人では、マクロンかアモンだった。メランションに流れることはない。アモンとメランションの国内政策では類似性が見られるけど、メランションはあまりにも共産主義っぽすぎ。でも、共産主義っぽい世界人類・世界各国は対等の思想のほうが、日本としてはやりやすいかもしれない。困るのはアメリカとの関係だろうが、日本はヨーロッパでも欧米でも白人でもないのだから、EUでブロックつくられるよりも実は良いかもしれないのだ。彼は以前はもっとEUに批判的だったけど、今回の選挙戦はそこまでではなかった印象だ。でもまあ・・・やっぱり非現実的だな。
ということで、マクロンかアモンなんだけど、マクロンはあの宗教っぽさがどうも苦手。ただ、ライシテ(政教分離・公共の非宗教性)はきちんと守っているから、まあいいかという感じ。どちらもでいいのだけど、私はオランド大統領はそれほど悪くなかった、あれは極めて現実的なやり方だったと思っているので、社会党への幻滅感はそれほどない。そして、実際にマクロンとアモンの集会に行ってみて、圧倒的にアモンのほうがよかった。私は今まで、サルコジ、メランション、アモン、マクロンの4人の集会に行ったことがあるが、演説を生で聞いて心を打たれたのはアモンが初めてだった。彼の信念のある社会主義者らしさが好きだった。逆に、マクロンはすごく期待して行ったのに、かなり残念だった(また機会があったら書きますが)。

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思うに、勝てないとわかっている選挙戦に出た人なのだから、良いに決まっていたかもしれない。利にさとい政治家はそもそも出馬しないだろう。かつて民主党の危機に「今こそ小沢さんを」と期待されていたのに、決して出馬しなかった小沢氏のように。私は特に民主党支持者でもなかったし(私は浮動票の人です)、どの機会だったかも覚えていないが、このことははっきり覚えている。「小沢氏はだめだ。信頼できない」と。危機感の中で選ばれる人だから、やっぱり人望と何かプラスαがないと選ばれないだろう。もっともここまで社会党が大敗するとは、だれも想像していなかったかもしれないが。

ーーというわけで、集会に行ってみた結果アモン氏支持になった。それに、マクロンが決選投票に行くのと、アモン社会党が勝てないのは明らかだった。ということで、私なら1回目投票アモン、2回目投票はマクロンですね。私はどうも、フランスの6,5パーセントに属するようです・・・苦笑(もっとも投票に行かない人、投票登録していない人もいるので、実際にはこの数字じゃないけど)。なぜかピケティと同じカテゴリーにいるようです。。。再び苦笑・・・)。

ほっとした

マクロンとルペンが上位2人に残りました。
ほっとしました。

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マクロンが大統領になるのは100パーセント間違いない。
結局「中道右派もダメだった。中道左派もダメだった。じゃあどうする?」
となったときに、従来の二大政党ではない、若い(39歳)、「真ん中」のマクロンになった。
前途多難はこれから。
右と左の良いとこ取りだけど、本当にできるのか。
これから国民議会選挙(衆議院に相当)があるけど、どうなるのか。
個人的には、もし私に投票権があったらマクロンかアモンに入れていたので、マクロンで満足。
ルペンは残らないという予測は外れたけど(苦笑)。
フィヨンはあと一歩で敗れたけど、むしろフィヨンとマクロンの決選投票にならなくてよかった。
フィヨン陣営はサルコジを恨んでいるだろうし、左派陣営は「左派で統一できていれば・・・」と悔やんでいる。メランションとアモンを足すと、トップに立つはずだったので。
左派統一という動きはずーーーーとあった。最初は「なぜメランションはアモンに合流しないのか」と言われ、いまは「アモンがメランションに合流していれば・・・」というため息がもれている。
でもムリなのはわかっている。国内政策では二人は合意ができるかもしれないけど、対外政策がまったく違う。二人の世界観は、思想の違い。一緒になれるわけがなかった。
大学院の友達は、マクロン支持が圧倒的に多かった。他にもいたかもしれないけど、あまりみんな大っぴらに言わないしね。メランション支持者はあまり隠さないので、彼の支持者も割といた感じ。
マクロンの隠しきれない宗教臭さが好きじゃないのだけど、少なくとも彼はフィヨンみたいに「キリスト教の寛大の精神にのっとって」などとは言わず、ライシテをちゃんと守ろうとしていた。だからまあいい。

あれほど大騒ぎしたにもかかわらず、結果的には、従来の中道右派にすらいかず、もっとずっと左寄りの「まんなか」に行きました。メルケルもシュルツも一安心。フレグジットと騒いだ(というか望んだ)英国の反応はどうなのかな。
もう誰もが「マクロン大統領、確定」と思っているので、これからの二人の争点なんてどうでもいい感じだが、「共和国を守れ」という流れになるでしょうね。EUの話は出ても、だから何?という感じでしょう。もう候補者の主張も、がなり声も聞き飽きた。
確かにトランプ効果はルペンにとっては追い風になっただろう。とはいっても、フランスはアメリカほど大国じゃないし、地理的に孤立していないし、ルペンは党創始者の娘だというだけで、トランプのような実績も力も頭もないし・・・。

それよりも、二人はテレビ討論をやるのかしら。ルペンは自分の集会で終盤「私が大統領になったら○○○(アラブ系の名前)などというフランス人はいない」などと叫んでいたが、それって実際にどうやるのかということを、マクロンにテレビ討論でぜひつっこんでほしい。すでにそういうフランス人は大勢いて、3世4世すらいる。植民地の遺産。彼らを追い出すの?それってナチスよね?そこをマクロンにぜひ突っ込んで欲しい。トランプは移民(?)の流入はとめようとした(そして裁判所に撃退された)。でも、アメリカ人を追い出すとは言っていない。そもそもアメリカは移民国家の歴史。でもルペンは違う。FNは違う。女性党首をいただいて、マイルド路線で仮面をかぶっているけれど、あの党は根本はナチスなのだ。選挙終盤になって支持率が少し下がってきたら、自分の集会で(テレビではなく)本性を現してきていた。そこをマクロンに突っ込んでほしい。


いよいよ第1回目投票の日がやってきた

いよいよ投票の朝がやってきました。
とっても良いお天気です。

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今日、大統領が決まることはないだろうけど、なんだ私は何度も、「大統領選(国政選挙)とEUはほとんど関係ありません」と書いてきましたが、万が一「離脱も辞さない派」が大統領になったら、どうしましょう。
私は骨身にしみてわかっているのよ。
若い世代(30代以下)は別だけど、EUをつくってきたのはエリートである、と。
ブレグジットではっきり判明したように、若い世代はEUがあって当たり前の世代だから違う。
(問題は、どこの国でも同じだけど、若者の投票率が低いこと)。

パリに住んで、さんざんEU関係のイベントに参加して、普段は一般の人は入れないような組織の建物(官庁だの裁判所だのフランス弁護士会だの)に出入りして、つくづく思う。EUをつくってきたのは、右派でも左派でもエリートであると。まず服装。場所が場所だから、みんな身なりを正してやってくるんだろうけど、それにしてもみなさん身なりが良い。着ているものの質が良い。そうでもないのは、若者と、知的左派、おそらく関係者と相場が決まっていると思う。そこで討論されている内容なんていうのは、一般日常生活とまったく関係ないというか・・・。

あと、EU議論はきわめて都市型というのはある。ストラスブール、リヨン、マルセイユくらいだと例外かもしれないけど(地方にもEUの拠点はあるので)。
EUのことを勉強した人材は、地方の役所や企業などでも必要とされているので、地方の大学でも問題はないとは思う。EU法はすべての企業に関係してくるし、市町村単位でEU他国との交流も盛んだ。

ただ、いわゆる国際関係的なEUの問題を考えるのなら、パリに来ないとダメだと思う。ストラスブールでもいいのかもしれないけど、「パリに来るべきだと思った」と言ってストラスブールのEU学科からうちの大学院に来た人を知っているので、やっぱりパリなのかもしれない。
つまり、EU問題はきわめて都市型、いや、首都型だと思う。

だから、極右が「EUのせいだ」と声高に叫んでも、地方(田舎)の40代、特に50代以上(学校教育を受けた年頃にはEUがまだなかった世代)で、それほど学歴も高くない人は、どう思うのだろう。あっさり信じるのか、なんだかピンと来ないのか。
農業関係者だと、スペインの農産物との競争に大きくさらされているから、EUに反感をもっているかもしれない。でも、フランスに入ってくる農産物は、スペインだけじゃなくて、モロッコからも結構多いのだ。たまにイスラエルとか南アフリカとかアメリカ産もある。果物なんかはチリとかカナダからもそこそこ入ってくる。EU内だとキノコはオランダ産、ぶどうはイタリア産もあるかな。結局、影響はつくっている農産物によると思う。
小さい工場で手作りの食品をつくっている人は、EUの安全規制がどんどんうるさくなっているので、反感をもっているかもしれない。でもフランスは、自国の農業の利益に関わることには、かなりNONと言っていると思うけど。
ただこういう人たちは、まったくEUと関係ない訳はなく、なんらかの形でEUが自分の商売に与えた影響をちゃんと知っているのは間違いない。彼らは自営業者だから。一番EUをよくわかっていないのは、地方で(都市でもそうだけど)、自営じゃない雇われ人の40代・50代以上の人かもしれない。

結局、「ユーロになったら物価があがった」とか「移民が多すぎる」という感情問題になるのだろう。特に地方の小さな街・町は、まるで一画がイスラム教徒のアラブ系の人にのっとられた(?)みたいなところは結構ある。仕事がないから、昔からいるフランス人の働く世代は、都市にいってしまう。お年寄りが多くなる。そうすると、残るのは家賃と物価が安くて住み着いた移民の人(若者含む)だけ・・・みたいな感じ。
街・町の力が弱いので、フランスへの同化を積極的に促す人の人数も少ないのは想像できる。同化には、彼らの子供がフランスの学校に通って・・・というように時間を待つしかない。彼らは一体何をやって生計をたてているのか。白人フランス人がやりたがらないような仕事なのかもしれない。ああいう所に住んでいたら極右に入れたくなるかも、と想像はできる。それが反EUの感情と結びつくのかどうか。極右がいくらわめいているからといっても。あまり大きく関係ないような気がする。日本にはEUはないけど「外国人が嫌だ」=「極右」になるでしょう。ネトウヨとかいっぱいいますし。
それに、フランスにいる移民のアラブ系・黒人は、圧倒的にフランスの旧植民地(フランス語圏)から来ているのだ。流入は今に始まったことではない。長い歴史がある。EUシェンゲン協定より、むしろ旧植民地問題なのだ。

私は今パリにいる。パリはフランス革命が起きた街で、伝統的に左が強いから、私もその基準で考えすぎているのはと自戒はしている。ただ私は、南仏の、おそらく右(と極右)がフランスで一番強い街に住んでいたことがあるので、まったく地方を知らないわけではない。あの街では、ルペンとフィヨンに票が集中するのだろう。

ああ、なんだかわかんなくなってきた。
それでも私は、極右が2回目投票に行くかどうかはともかく、極右の大統領がフランスに誕生することはないと思っている。

最後に。
私が常にEUに対してもっている疑問を、理論的に解決している人は、メランションです。でも、理論と現実のプロジェクトは別。
今後、世界で興味深い政治的・経済的テーマになると思ったのは、社会党のアモン氏の政策revenu universel。日本だとベーシックインカムと言われている問題。これを論じた討論会に行けなかったのは残念。しかも後になってピケティも参加していたと知って、本当に悔やまれた。

一番ユニークで面白かった候補者は、Jean Lassalleでした。
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ピレネー出身。61歳。牧羊をいとなむ家族に生まれ、農業高校を出て、21歳で市長になった。「フランス地方(田舎)市長連合」の推薦をあつめて立候補した人です。TTIP猛反対(TPPと同じで、もうほとんどつぶれたけど)。政治的には中道。ピレネー地方にあった日本企業が去ろうとしたときには、地元の雇用を守るために、ハンガーストライキを断行して、妥協を勝ち取ったことも。大統領候補としては何が言いたいのかよくわからないのだけど、理想ばかりの口八丁(と言わさせてもらいます)をがなりたてている候補者たちの中にあると、朴訥としていて、それでいて芯の強さは感じさせる人で、新鮮でした。「フランスは今、ストレスがありすぎる」と言っていましたが、11人の候補が集まる中で、空気感を変え、テレビ局側の出演者の態度も変えることができたのは、この人だけでした。

テロが起きてしまいました。その他メランションやつれづれ

あー。テロが起きてしまいました。
シャンゼリゼか。なるほど・・・。
エッフェル塔やルーブル美術館なども非常にシンボリックな場所だけど、あそこは「入場するところ」だから、すでに厳しい警備が敷かれている。シャンゼリゼって、ただの道(大通り)だものね・・・。
シャンゼリゼ通りは坂道で、一番上には凱旋門があるけど、周りは道路で渡れないので、警備はしやすい。今回テロが起きたのは、シャンゼリゼ通りの真ん中より下の方だったみたい。やはり、凱旋門に近いシャンゼリゼは、観光客も多いけど警備も厳しく、やりにくかったんだろうと思う。実際、ジョルジュ5駅より下の方がすぐに封鎖されたけど、シャルルドゴール・エトワール駅(凱旋門の一番近く、シャンゼリゼの一番上)は、少なくともすぐには封鎖はされなかったみたいなので。

やっぱりシャンゼリゼというインパクトは大きい。
ただ、一般市民や観光客が被害にあうテロじゃなくてよかった
治安当局は本当にがんばっている。ニースのような大勢の人が被害にあうテロは、起きにくくなっている。
亡くなった警官の人は、本当にお気の毒だと思う
大統領選に関して言えば、すべての候補が「テロは許せない、治安対策に力を入れる」といっているので、方針や政策の違いは特にない。

でも、やっぱり心理的な影響はある。
「ああいう人達は本当にうんざりだ。みんないなくなればいいのに」と思ってしまうけど、「みんな」って誰のこと? と自問自答する。
本当に「みんな」を排除しようとすれば、それはナチスである。ナチスの権力、ナチスの思想、ナチスの行動力がないとできない。そんなことできないのは、誰もがわかっている。指名手配犯を追い、疑わしい人物をできるだけマークするなんていうのは、もうとっくの昔にやっているのだから。

でも心の奥底で「してほしい」と願い、それを投票に反映しようとするのなら、それができる政治家はルペン父だったと思う。
FN国民戦線の創始者で、人種差別主義者。真性極右
今の党首のルペン娘には、そんな強さはない。
もし本当に事が起これば、彼女は声を荒らげて叫んでも、実際はびくついて震えるだろう。
メランション相手の討論程度でも、震えているんだから。
父親だったら、断固として行動する強さがあっただろうが。
あの人は弱いのだ。いざ国が本当に非常事態になっても、任せられるような人じゃない。
でも、そんなマイルドさがあるから、FNは「普通の党」と言われるようになり、支持を集めたのだ。
極右、極右と言われているけど、真性極右じゃない。
「まんなか」の位置は国によって違うので、日本からみたら、今のFNは極右ですらないかもしれない。

メランションに関しては、組織としてついているのは共産党。
共産党といっても、日本の共産党と似ていて、西側的。
弱くなって人数も激減しているといっても、組織力は日本と同じで大変強い。
ただし、フランスの共産党は、プロレタリア革命の「精神」だけはずっと濃く受け継いでいるように見える。
メランションの思想は「ドゴール的であり、共産主義的である」ということだ。

メランションは、移民系のフランス人に評判がいい。
特に南米系フランス人。
日本では共産主義というと、ソ連やその周りのイメージが強いけど、実際にはチェ・ゲバラじゃないけど、中南米でもすごく強かった。あとアフリカの一部も。
これらの共産主義の流れが、フランス(や欧州)には強く入ってきている。
そういう思想を持っている人、支持する人は、人数的にはスペインほど多くはないけど、一定数いる。
(スペインのポデモスも、この流れでしょう)。

そういえば、メランション支持にはアラブ系をあまり見ない印象だ。ノワール(黒人)はいるけれど。イスラム教というのは、歴史的には共産主義に対抗するもう一つの砦だったのかもしれない。そんなこと考えたことなかったけど。でも、貧しい地域では共産党や極左政党が強いから、実際にはアラブ系の支持者は多いのかもしれない。

あともう一つ、東側から来た系統のフランス人にも、メランションは結構評判がいいことに最近気づいた。東欧というよりも、もっと東。ウクライナとか旧ソ連に属していた国々の系統の人たち。


今回急速にメランションの支持が上向いたのは、本来なら社会党に入れる大きな勢力が、右往左往しているからだろう。マクロン支持に行った人は、もう動かないだろう。社会党に忠実でアモン支持に残っている人も動かない感じだ(ピケティもここに入る)。問題は、それ以外の人たち。

メランションは、主要5人のテレビ討論会の時、周りが自分の発言をするだけだったとき、一人だけ討論にしようと頑張っていた。これは結構好印象を与えた。
(ただ仕方ない感じもする。一人ひとりの発言時間が公平になるように、デジタルカウンターをが置かれている。どの候補者も自分のカウンターを見ていたのだろうから)。
あと、討論会のとき、SNSでテレビ局が同時進行で意見を集めたり、どの候補者がいいか投票を求めたりしていたとき、メランションがダントツ1位だった。熱狂的メランション支持者がSNSに張っているという感じだった。

メランションは、ドゴール的に「フランス第一」であり、EU離脱も辞さないといっても、彼のビジョンは共産主義的で、「世界中で人民に力を!」「人民よ、権力をとれ!」という感じである。そこが、同じ「フランス第一」でEU離脱でも、ルペンとはまったく違う。FNはどこまでも内向きである。「フランス第一」と叫び、移民排斥を叫ぶだけ。

ドゴールはフランスの孤立を恐れなかった(ただし、外交術も大変優れていた。だからこそ偉大だった)。そういうドゴール的強さをメランションには期待できても、ルペンにはできない。それが、ルペンの支持率が落ちてきて、メランションの支持率が上がってきた理由だと思う。それに、もともとああいう革命闘士的な人は、フランス人は好きだと思う。ただ、やっぱりあの共産主義っぽさはどうも、という人は多いだろう。

一番の重要な争点は、前にも書いたように、景気・失業・給料・年金・社会保障(様々な手当てや健康保険など)である。ただ、もう誰もが同じに見えてくる。
フランスは伝統的に、中道右派(シラク・サルコジなど)と中道左派社会党(ミッテラン・オランドなど)の二大政党だった。
「中道右派もダメだった。中道左派もダメだった。じゃあどうすればいい?」というのが今回の選挙である。前にも書いたけど。

オランドの人気はまったくなく、二大政党のかたわれ社会党支持者の層が浮遊している。マクロンに決めた人、社会党候補アモンを支持する人、これらはもう動かない。問題は残りである。この残りが今、あっちこっちに浮遊している。

マクロンは新しい政策をもっているように見える。そういう意味で期待値は高いだろう。彼は上位2人に残ると思う。働き盛りで、生活や仕事・年収も落ち着いている、いわばフランスを支えているような人々は、リッチになればなるほど中道右派が多いとはいえ、フランスの場合伝統的に社会党支持者も結構いる。あるいは、時によって中道左派社会党、時によって中道右派と変えていた、いわゆる「浮動票」の人達もものすごく多い。そういう人は、今回マクロンに行っているように見える。ミーティングに行ってみたが、支持者層(特に服装)を見るとわかる。

一方で、それでも社会党に忠実でアモン支持なのは、女性、若者、高齢者、知的左派が多かったと思う。これもミーティングに行ってみてそう思った。ピケティなんかはアモンの友達らしい。あの人、世界的に大成功した超有名人で、かなりリッチでしょうに。知的左派の中には、今回マクロン支持になった人は結構いると思う。それでも彼はバリバリの社会党支持なのは、骨の髄まで平等を尊ぶ、いかにもフランスにしかいなさそうな知的左派なんだなー、と思う(英国にはいないタイプ。アメリカには絶対いなさそう。ドイツは緑の党が強いし、旧東ドイツもあるので、また違うと思う)。あと、ピケティの「ユーロ圏議会構想」を実現するには、安定した大政党じゃないとダメ、アモンは支持してくれた、という計算もあるのかもしれないけど。

アモン自体の評判は悪くない。誠実そうという評価が高い。社会党候補になると誰もが思っていたバルス元首相を破ったのは、変化を望んだというのもあるだろうけど、アモン氏の実績と人柄に負うところが大きいと思う。それから、彼は、中道左派の中でも、かなり左である。オランドで失敗し、中道左派の中の「中」がマクロンで離脱しちゃったから、必然的にそういう人が選ばれたというのもあるだろう。戦略として、revenu universel (国民全員に約9万円を毎月支給)を恐れずがんがん主張すればよかったのにと、私なんかは思う。良い悪いではなく、信念に基づいた政策はひるまず声高に主張したほうがいいという理由。なんだかちょっと腰が引けたところがあったのは、反発も大きかったからか。

パリの街を歩いていると、極右二人のポスターは破かれていることが多い。「刑務所行け」などの悪口もある。マクロンのポスターには「ロスチャイルドにお問い合わせください」「ロスチャイルド.com」などという、おなじみの批判も描かれている事も。面白いのは、極右二人のポスターは悪口が書かれてびりびりに破かれていて、今はもう痕跡すらないという事が多いのに対し、マクロンやフィヨンは、たまに破かれていたり悪口が書かれていたりといったごく並の程度、左派の人たちのは、ごく並よりももっと手付かずのまま残っている、というケースが多い感じがする。左派に対しては、支持もしないが貶める理由も特にない、ということだろうか。
(アメリカなら貶める人はいるでしょうにね。共産主義っぽい臭いがするだけでヒステリーを起こす人がいる国だから)。

テロがなかったら、私は「フィヨンとマクロンが決戦投票」と言ってしまったかもしれないけどね・・・。
組織票はあなどれない。フィヨンは、スキャンダルにまみれたが、なんだかんだ言っても二大政党の1党の人である。暗めだけど、人品がある落ち着いた紳士に見える。それはアモンも同じ。今回は二大政党の候補者二人が、人品が感じられる紳士らしい風貌なのが面白い。サルコジVSセゴレーヌ、サルコジVSオランドの時と雰囲気が違う。腐ったと言えども二大政党は人材をもっているなあ、と感じた。(特に中道右派(共和党)は、サルコジのあのギラギラした感じにうんざりしていたのかもしれない)。

ただ、フィヨンやマクロンに関しては、キリスト教とライシテの問題がある。
今回ほどキリスト教が表に出てきた選挙戦は私は初めてだけど、メディアでもそう言っているので、おそらく特筆すべき新しい傾向なのだろう。あまりメディアでも表に大きく出ない問題ではあるけれど。

一方でメランションは、冬はいつも赤のマフラー、今は赤のネクタイをしている。
共産主義的、革命的だなあと、なんだかおかしい。
そういえば、ロートレックで有名なアーティスト、ブリュアン。
あの人も赤いマフラーをしていた。

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彼はブルジョワのお金持ちの家の出身だったけど、親がおちぶれて、学校中退。
宝石工芸なんかもしていたことあったけど、のちに芸術家になった。詩人であり、作家であり、シャンソニエ(キャバレーなどで風刺的な、あるいは滑稽なシャンソンや一口話をきかせる芸人・アーティスト)。
政治家として立候補したこともあり、そのときのスローガンが「人民(人々)の候補」「資本家財閥たちの敵は、この人間主義の詩人に投票するのだ」だった。共産主義的であり、フランス革命的である。

何度もいうけれど、EUは確かに大きな争点ではあるけれど、あまり関係ないと思う。
問題は、「もうあの人たちにうんざりだ。来てほしくない。我が国からいなくなってほしい」という人々の奥底の心情ではないかと思う。それが直にEU問題に結びつくかというと・・・違う感じがする。一応移民の流入はとまったし、フランスはなんだかんだ言っても豊かで社会保障もきちんとしている。ただ、直前にテロが起きてしまったのはどう影響するのか。どのみちナチスにはなれないのだ。なる必要もない、とどこまで冷静でいられるか。

前も書いたように、「どうせ第1回投票で決まる事はないのだ。批判票・心情だけで投票する」という人が多ければ、ルペンは上位2人に入って決戦投票に行く(そして落ちる)。「今回は本当に1回目から真剣に考えないとまずい」とより一層冷静になれば、ルペンは残らない。

シャンゼリゼのテロの影響は、どこにでるのだろうか。ルペンじゃなくてメランション有利になるかもしれない。あの人が候補者の中で一番、ドゴールばりの強さを感じさせるから。それとも影響は、実際にはあまりでないかもしれない(テロ慣れしてきてるから)。でも投票直前に、亡くなった警官をいたむ国のセレモニーか・・・。行うのは当然なんだけど・・・。うーん・・・。

ただこれは個人的な意見だけど、もし私に投票権があったなら、「あんな犯人や集団に、自分たちの国の最も大事な選挙・大統領選に影響を与えることができるなんて思われたくない。うぬぼれるな」と思い、彼らのテロは無視して、本当に自分の生活や国の問題解決、そして未来のために良いと思える候補者を選んで、投票を決めると思う。「テロは卑劣ではあるが、テロを起こしたくなるようなことを、フランスは外国で散々やってきた」のはわかっている。それでも、毅然としていたいと思うだろう。

フランス大統領選。今年の欧州、独断予想(ルペン氏は第1回投票で落選)

すっかりご無沙汰してしまいました。
生きております。
全然更新できなくてすみませんでした。

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もうすぐフランス大統領選です。
ここで私が数ヶ月も前から言っている、独断予想を言ってみたいと思います。

マリーヌ・ルペン(国民戦線FN・極右と言われる)は、決選投票に行くことはありません。
第1回目の投票で、上位二人に入りません。

あーあ、書いちゃった。勇気を出して独断を書きました(苦笑)。

そもそも、ルペンが大統領になると本気で思っている人は、そんなにいるのかな。
仮に決戦投票にいったとしても、決選投票で落ちる。
大抵のフランス人はそう思っていると思いますが。
ただし、選挙というのは水物で、あけてみないとわからないところがあるから、不安はあります。

日本のマスコミは、極右台頭、EU崩壊、みたいな論調をずっとあおっています。
極右が票をのばすのは確かなのですが、極右大統領が誕生するのでは、極右が政権をとるのでは、EU崩壊とはあまりにも言い過ぎです。

なぜそうなるのか。決定的な理由が3つあると思います。
そのうち最初の2つは、現代日本の欠陥と直に結びついていると思います。

まず一つは、再三言っているように、日本のメディアは英国のメディアを見過ぎ。
ル・モンドなんて「英国はフレグジット、ルペン大統領という考えにとりつかれている」と書いていますが、私も英国の新聞を見ていると、そんな印象をもちます。大半の英国メディアは、明らかにブレグジットに焦燥感を抱いています。私から見ると「どうしちゃったの?!」と思えるような、自暴自棄のような、断末魔というか、大げさですがそんな感じすら受けます。でも、英国の中にいる人には見えないし、比較対象=複眼をもっていない人にはわからないのかも。

想像してください、記者の仕事を。
あるEUに関連する動きや決定が、EUで起きた。最初は事実を報道します。こういうことがおきました、と。ところが、翌日あたりには「反応」「評価」を書かなければならない。反応を書く一番てっとりばやい方法は、現地メディアをみることです。ところが、現地メディアってなんだ? 28カ国もあるのに。
これがフランスで起きたことなら、フランス駐在の特派員ーーおそらくフランス語ができるーーが、フランスの「複数の」メディアを見て書くでしょう。ドイツも同じ。かなり正確になります。
(他の国だと、はなはだ怪しくなってくる。メディアによっては駐在員がいない、現地の言葉ができない、など)
ところが「EU」というくくりだと、どうしたらいいのか。
そこで手にするのが、英語で書かれている英国の新聞、英国のメディアとなる、とある方に聞きました。
ほとんどのメディアが、ロンドンに欧州総局をおいていること、駐在員の滞在期間が短いのも問題でしょう。
私の知る範囲だと、日本人でも経済関連の人はもっと冷静で、事態を正確に見ようとしている感じがします。自分たちの利益が直撃するので、シビアな情報を入手しようとするのでしょう(そういう冷静な視点さえあるのなら、英語で情報収集は問題ないと思います。たくさんの情報や分析があります)。やっぱり日本は経済大国で、政治後進国だなあ、と思うのです。

もう一つは、これが声を大にしていいたい事なのですが、多くの日本人は左派がわからないから、欧州がわからないということです。
社会主義は欧州でうまれ、欧州大陸に深く根ざしています。20世紀には、社会主義という太い幹から共産主義がうまれ、役割を終えました。今21世紀で、社会主義から、新たな緑の党という勢力がうまれています。
これがわかっていないから、極右も政局も見誤る。極左といわれる勢力(シンザやポデモスやメランション)にいたっては、理解の外。
オランダ総選挙でも、あんなに極右は政権をとる騒いで起きながら、極右が敗北宣言をするほど負けたのは(それでも躍進しましたが)、左が強いからです。ががっと極右にふれそうになっても、欧州大陸に深く根ざした左が、ぐっと左側にひきよせるのです。

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オランダの構図は、前回の英国総選挙に似ていると私は思います。英国はEU問題を単体で国民投票にかけたのでああなりましたが、今の議会は、保守党が単独過半数をとっています。保守党が与党なんて、珍しくもない。しかも単独過半数だから、安定政権です。

これは、誰も予想していなかったのです。どのメディアも。結果が出て「えええっ!びっくり!」でした。極右が勢力をのばすという予想と大きな不安があり(今のフランスみたいでしょうか)、でも左に勝機があるかもしれないという予想もあった、でも結果は保守党単独過半数。これは「極右にいかずに保守党でとどまった」とも言えるし「左の人が右によって保守党にいれた」とも言えます。

今のフランスのメランションのように、「社会党・労働党よりももっと一層左に寄る」という現象が英国に出ないのは、英国は欧州ではあるけれど、共産主義をもうんだ社会主義のふるさと・欧州大陸ではないから、むしろ米国に近い思想をもっているからでしょう。

ここでフランスです。社会主義の本家です。共産主義の本家でもあります。この選挙戦の間、フランスの左派の力をずっと見てきました。私の注目ポイントはそこでした。そこでこの独断予想となったのです。ルペンが大統領になることはないのはもちろんですが、決選投票に行くこともない、と。

細かい政局の話をしますと、もっと共和党フィヨンがしっかりしていれば、話は違ったかもしれない。あのスキャンダルは、サルコジの陰謀じゃないかと思うのですが(苦笑)。あとはジュペ? 「悪くはないけど、70代(70−71歳)で大統領には年取りすぎ」と世間では思われていて、本人もそれを仕方なく受け入れていたように見えていたのだけど、トランプ大統領(70歳)の当選で、あきらめきれなくなって悔しくなったのかもしれない。共和党がこけたのは、痛い。そうじゃなければ、極右に行きそうなかなりの票が共和党に集まったでしょうに。

あとは、フランスだけではないけれど、従来の左派(フランスなら社会党、英国なら労働党)が、疲弊を起こしているように見える。時代の変化かもしれない。これは難しい問題なので、詳細はここではやめておきます

要するに問題の根本は、経済がよくなくて、失業率(特に若者)が高いこと。だから以前は「もっと働いてもっと稼ごう」といったサルコジ大統領(中道右派・現共和党)が当選した。それがうまくいかなかったものだから、「そんなくらいなら、社会保障が手厚い社会党のほうがマシ」となって、オランド大統領が当選した。
でも、うまくいかなかった。
中道右派もダメだった、中道左派もダメだった、じゃあどうする? というのが今回の選挙なわけで。

オランド大統領がはなはだ人気がないのは、一言で言えば景気や失業率を回復させられなかったから。社会党のくせに、税金を上げようとしたり、社会保障を引き締めようとしたりしたから。移民問題で、社会主義者にあるまじき発言をしたから(ちょっと気の毒だと思いますけどね・・・)。だから社会党崩壊なんていう悪口すら出てくる。

でもね、私は彼は本当にまじめだったと思うのです。彼は国の財政立て直しを必死にやったのだと思う。それに、社会党らしい「平等」を目指した政策をたくさんやってる。同性愛者の結婚だけじゃなくて、表に目立たないような政策もたくさん。アメリカの大統領だと、人気取りばかりで、国の財政を大赤字にして平気なやつもいたけど、オランド大統領は真逆だったのです。必死にやった背景には、EUによる財政健全化のプレッシャーがあったと思う。こう書くとEUとフランスが別物みたいだけど、フランスはドイツと並んで、EUを動かしている当人ですので。でもEUと財政健全化の関連なんて、そんなことまで考えて投票する人、まずいないでしょうね。

話を元に戻して、最後3つ目の点。
私はこれも声を大にして言いたいです。
「国政選挙にEUはほとんど関係ありません」。
なぜかと言われても、そういうものなんです。
ここをほとんどの日本のメディアがわかっていないような気がします。
確かに今回は、「移民を入れるな」「国境を閉じてしまえ」という感情に訴える要素があり、それがEUに直につながっていく面はある。でもそれは、EUそのものを否定する=EUそのものを論じるとういうことには、国政選挙ではあまりならないと思う。
なぜかと言われても、そうだからとしかいいようがない。
これはもう、現地感覚でそう思うとしか言えない。
もちろん、どの候補者もEUに関して自分の方針を掲げていますけどね。
結局、市民は、自分の生活が一番大事。自分が払う税金、景気、失業、そして社会保障(さまざまな手当て、保険、年金など)の問題が一番大事なのです。日本人も同じでしょう。それはEUに結び付きにくい話なんです。遠すぎて。実際これらの課題がEUに関係あるかというと、あまりないかも。それはみーんなわかっているのです。
だから、この前の主要5人のテレビ討論会でも(討論になってなかったけど)、EUの話題なんてほとんどでなかった。

日本だってそうでしょう。日本の市民が、日米同盟に関する問題を一番に考えて投票しますかね? 沖縄の人ならアメリカの基地問題があるから別でしょうけれど。震災問題・原発問題すら、起こった直後はともかく、遠い地域の人には「関係ない」となってしまう。東日本大震災は、西の人には関係ない。阪神淡路大震災は、東の人には関係ない。当然、投票行動に影響を与えることは、あまりない。そんなものです。ある意味、平和なんです。

前から言っているけど、国民戦線FNというのは、批判票を集める役割でした。なのに今回は、まるで当選してもおかしくないかのような、メインの役者として扱われている。ここがポイント。どこまでがただの批判票で、どこまでが本気か。
本気でルペンに大統領になってもらいたいと思っている人は、あまりいないと思う。あの党は、基本的に否定することが能だから。あれをやめます、これをやめますという否定だけで本当に国政ができるのか。「フランス第一」。耳には心地よく響きます。でも、「フランス第一」といいさえすれば、職がうまれて失業者が減るのか。暮らしが良くなるのか。あの人に、あの党に、大政党(共和党・社会党)すらできなかったことが、本当にできるのか。その点メランションはーーあの人も否定が多いけどーー彼には思想があるけどね。

(だから英国独立党のファラージュは、EUに払う金さえなくなれば、英国の社会保障が充実すると、国民投票時に大キャンペーンを張ったのですよ。大ウソだったことが選挙後にわかり、本人も数字のウソを認めましたが。実に上手なトリックでした)。

つまり、もし「ルペンに投票して、思いっきり批判票をいれてやれ。どうせ決選投票に行っても大統領になるわけじゃないし」と思う人が多ければ、ルペンは上位2人に入り、決選投票にいく。もし「この趨勢で、うっかり勢いで間違ってルペンが大統領にでもなったら困る。今回は安易な批判票をいれておくのはやめとこう」と思う人が多ければ、ルペンは第1回投票で落ちる。
ここは予想のしどころで、私は後者じゃないかと思っているんですけどね。

結局、ヨーロッパは平和で豊かということです。
経済は悪いけど、本気で極右に入れるほどには悪くない。
そして、社会保証が手厚いので、極右になどならなくても、しっかり生きていける。
社会保障が手厚いのは、欧州大陸が社会主義のふるさとだからです。ここがアメリカと違います。
あ・の・経済危機に陥って、銀行ATMの前に長い行列をつくったギリシャですら、極右はうまれなかった。うまれたのは極左でした。逆に、ブレグジット直後にあったスペインの総選挙で、極左ポデモスが大幅に票を伸ばすと言われていたのに、ふたを開けてみたら、かなりの苦戦の伸び悩み。拍子抜け。ブレグジットを現実に目の当たりにして、「ああなってはマズイ」と、みんな我に返ったと言われておりますが(そういえばここでも事前予想が当たらなかったな。ここも政権与党が結局勝利したし、オランダと似ているかも)。
ポデモスはEUを批判ばかりしていて、私にはEUをスケープゴートにしているように見えていましたが(ギリシャのシンザと同じで、本気で出る意気地はないのかも?!)、「やっぱりそうだったのか。市民は批判票としてポデモスを支持していたのかな。市民の方がずっと賢いな」と思ったものでした。

私は、ドイツの総選挙も終わって今年が終わる頃には、「欧州は、確かに極右は票をのばしたものの、各国の政権を見渡すと、極右にふれるどころか、全体的には中道右派で現状維持か、あるいは、むしろ前よりも左に寄った」という結果になるんじゃないかと予想しております。

独断予想でした。
外れたらすみません。

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追伸:
テロの問題を付け加えます。1年位前、私は「選挙の前に大きなテロさえ起こらなければ」という条件付きで、「極右が政権をとることはない」と書いたことがあります。でも、最近では、その条件すら自分で疑問視する気になっています。なんというか、テロ慣れしちゃったというのか。欧州のあちこちでテロが起きていて、どういう犯人か詳細が報道されます。たくさんのケースを知ってきた中で、「テロを完全に防ぐことなんて無理」と、つくづく思います。「移民が来るからテロが起きる」「大勢流れてきた移民の中にテロリストが混ざっていた」と極右は叫びたがりますが、いやいやそうじゃないでしょ、もう既に住んでいる人がテロを起こしていることが多いよね、国籍もっている人すら結構いるよね、最初から危険人物だったわけじゃない人も多いよね、と。社会に深く根ざした問題で、叫べば簡単に解決できるような問題じゃないと、誰もが感じていると思う。既にすんでいる市民を、宗教や肌の色、親や本人の出身国で排除すれば、ナチスになっちゃうし。
一方で、現実に、あのすさまじい移民の流れが、ある程度とまったことは、やはり大きい。ちょっとほっとしたというか・・・。トルコのおかげでもある(気の毒なトルコ。高い代償になりそう。エルドアン大統領、いま大問題になってますけどね)。それに、欧州の警察や治安当局も、必死でテロを防ごうと頑張っている。ルーブル美術館の入館警備は厳しくなり、エッフェル塔にも新たな警備が敷かれた。「よほどシンボリックな場所で、大勢の人が亡くなるテロさえ起きなければ」と私ですら思う。本当に治安当局はよくやっていると思う。それでも完全に防ぐことはほぼ不可能だけど・・・。「その場所にいさえしなけば大丈夫」と、もはや開き直りもしているけど、実際にそうでもある。交通事故にあう確率より低いだろう、と。

あと、日本のマスコミ批判ばかり書いていますが、世論調査でずっとルペンがトップに来ているので、日本のマスコミが「極右が政権をとるのか?!」と騒ぐのは仕方がない気もします。でも、世論調査って当たらないのよ。私がはっきり自覚したのは英国総選挙からですが、その後、フランスの地方選挙、ブレグジット、スペイン総選挙、アメリカ大統領選、オランダ総選挙と、もののみごとにすべて予測が外れています。世論調査の方法が悪いのかもしれませんが(時代遅れ?)、時代が大きく変革しようとしている、大きくうねっているのかなとも思います。

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新年のごあいさつ

新年あけましておめでとうございます。

今年もよろしくお願いいたします。

前から「別の形で新しく欧州連合に関するページをつくりたい」と話していましたが、ある所と契約が結べることが決まりました。先日、先方より合格(?)の知らせを頂戴しました。

今月中には始めたいと思います。その際は、またここでお知らせさせていただきます。
こちらのブログは、正式な記事では描きにくい部分を書く場所として続けていきたいです。

今年は欧州の試練の年です。私はある新聞の原稿に「テロさえ防げれば、欧州はもちこたえられるのではないか」という内容を書きましたが、12月にベルリンでテロが起きてしまいました。
ただ、ドイツの連邦選挙まではまだかなり時間があります。もしこのまま大きなテロが起きなれければ、フランスでFNの大統領が誕生することはないと私は思っています。マスコミは好きに騒ぎますけどね。

それから、今年はロシア革命100年の記念の年です。

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新年には、ロシア革命を特集した雑誌や、ムック(のようなもの)が店頭に並びました。
ソ連の体制は破壊しましたが、社会主義から生まれた共産主義は偉大な思想でした、、、といっても、社会主義的な左派思想も政党も壊滅状態の日本では、ピンとこないのでしょうね。。。欧州大陸と日本(や米英)と何が一番違うかと聞かれたら、私はこの「社会主義思想の根付き方」を真っ先にあげます。社会主義思想のふるさと、パリにいるからよけいにそう思うのかもしれませんね。

ヘミングウェイは言いました。"If you are lucky enough to have lived in Paris as a young man, then wherever you go for the rest of your life, it stays with you, for Paris is a movable feast."

もしあなたが幸運にも若者としてパリに滞在したのなら、残りの人生をどこにいようとも、パリはあなたと共にある。なぜならパリは移動祝祭日だからだ。

私は若者じゃないし、作家でもない。私の気持ちはパリを「移動祝祭日」ととらえた感覚とちょっと違います。でも、ヘミングウェイの気持ちはとてもよくわかります。
でも私はいまパリに住んでいるので、パリを去ったなら「移動祝祭日」ととらえたこの作家の感覚を理解するようになるかもしれません。

最近思うのです。どうして英国が欧州連合を去ったのか。
欧州連合そのものが、左派思想によって建設されているものであり、それは英国には本質的になじまないのものなのだと。
ただ、英国における左派思想は階級とともにあったけれど、その階級制度は急速にくずれつつある。くずれはじめたのは、ブレア政権からと言えると思います。
英国社会における100年単位の変化=本質の変化が本格的に始まるのは、いまの20代が社会で活躍しはじめるころかもしれない。その変化を語るのに、欧州連合の存在は欠かせないであろう、と。

アメリカも変わるが、それは想像できる範囲にすぎないだろう。
中国やインドの変化は巨大で想像しにくいが、やはり100年単位で見た場合、後進国における進化の方向性はある程度予想ができるのではと思う(中国は一つの国でいられなくなるかもしれないが)。
この世界の一番新しい実験は、やはり欧州連合だと私は思います。
アラブ世界の変革は、欧州を抜きに語れない。ロシアも同様(アフリカも)。それはアメリカや中国に大きな影響を与えていく。
日本の立場も、欧州を見ることなしに考えることはできない。
そして私が一番知りたいのは、日々変わる国際情勢とはちょっと違う。それは知るべきことであり、知りたいことを知るための不可欠な手段。何よりも私は、人間の思想や世界のあり方、文明がどう変わっていくのかが、一番知りたいのだと思う。

とりとめのない話になってしまいましたが、今年もよろしくお願いします。

よいお年を

もう2016年も終わり。
1年があっという間に過ぎていきます。

いま、年明け早々にテストがある科目の勉強をしています。ここ最近ずっとこればっかりやってます。「領土の統合」(英語だと Territorial cohesion)という科目なのですが。
・・・いやあ、面白い。
私は欧州連合のことを「一番大事なのは、始終集まって顔突き合わせて話していること。それが一つの欧州を目指す、もっとも重要な行為」とこのブログに何回か書いています。今度から「最も重要」の項目に「領土の統合政策」を入れたいと思います。日本のメディアでこれが取り上げられることは、おそらく決してないでしょう。日本に限りません。裏方にすら見える、地味な仕事ですから。でもEUの予算も最も使っているこの政策、この地道な仕事こそがEUをつくっているのだと感じ入りました。
そういえば去年の今頃は、ブリュッセル訪問の実現のために、最後の追い込みをしていたんだっけ。訪問先なかに地域委員会の訪問もありました。初日の1番目の訪問先でした(ていうか、私が予約とって組んだんだけど)。

ああ、1年はあっという間。
来年はどんな年になるのでしょう。
いまひとつ結果を待っていることがあるので、うまくいくといいのですが

みなさんも来年がすばらしい年になりますように。
よいお年を。


日本人留学生が行方不明の事件とEU逮捕状

いま、ブザンソンで日本人の留学生が行方不明になったことが報道されています。
一刻もはやく、犯人と被害者をみつけてほしいですが・・・。

なぜこのブログで取り上げるかというと、フランス警察の情報収集があまりにも素早く、恐るべしEU、と思ったからです。

現地新聞の記事等の報道をもとに時系列を書きますと。

12月4日 被害者の女性がダンス教室からいったん寮に戻る。郊外のレストランで男性と夜ご飯。その後二人で寮に戻った。監視カメラで判明。これが友達が見た彼女の最後の姿。

5日 警察によると犯行はこの日。犯人はフランスを電車で去る。
(犯人は本人を装って、たどたどしいフランス語で「領事館にいってくる」というメッセージを友達や学校に送る)

7日 犯人はこの日に、欧州を飛行機で出国して「別の大陸」に向かったという。

12日 被害者の近しい者が警察に届ける。「成人の行方不明」の手続きがとられる。

15日 検察がブザンソン司法警察に捜査室を付託する。大学寮の部屋が封印される。
(あまり訳に自信がないのですが、正式に事件とみなされて捜査班がつくられたという意味ではないかと思います)

19日 目撃者探しが始まる。

23日 司法警察は正式に犯罪と認定。

26日 正式に国際逮捕状が発効。

私の記憶では、警察が被害者はもう死亡しているとはっきり言ったことが報道されたのは、23日である。12日から23日までのたったの11日間で、フランスの警察は、彼女が死亡している証拠をつかみ、犯人の犯行後の足取りをつかんでいたのだ。報道されているとおり、フランスからは電車(列車)で出国、欧州の国をあちこちいった後、3日後に別の大陸へ飛行機で移動。
(犯行前の足取りをつかむために、ブザンソンのホテルの聞き込みなどは、同時並行して進められていたようだ)。

残念ながら報道されていないが、国際指名手配だけじゃなくて、EU指名手配というものもある。

これは

ーー投獄刑が確定している懲役刑か、最低4ヶ月の安全措置機関がもうけられる懲役刑のとき
ーー投獄刑となる違法行為か、最低1年とみなされる安全措置機関もうけられる違法行為のとき

だそうです。

刑法にまったく詳しくないもので、訳がしょうもなくてすみません。
1件スリを犯したくらいでは、出ないということでしょうか。

2012年には、1万450件のEU逮捕状が出され、5840人がみつかったそうです。すごい、検挙率が50パーセントを超えてますよ・・・。2012年までの記録では、2009年の1万5800件が最多数とのこと。

いや本当にすごい、すごい速さ。。。と思ったのです。11日間のわけがない、実際はもっと短いはず。

テレビ朝日は「犯人はアメリカ大陸(北南)の出身」と報道しましたが、フランスではその報道はありません。他局もまだ言っていないようです。いまやネットでまわる情報の速さ(正しいか間違っているかは別問題)がすごすぎるので、信頼がもてる情報源からの発信は大事かとは思いました。

実は私は第一報を見たときから、もしかしたらそこの出身じゃないかと思っていたんです。いろいろ考えていくと西欧人でもおかしくない。西欧に初めて来た人という感じがしないし、むしろ西欧人のほうが簡単な説明ができるような感じもしたのですが、どうしても西欧人という感じがしなかった。なぜ私はそう思ったのだろう・・・と後で考えてみました。

犯人は「時計職人のような緻密さ」で、計画的に動いていたという。
犯人はシェンゲン協定のために欧州に国境検査がないのを知っていた。なのに国を転々と変えれば、目くらましがかけられると思っていた。そんな行為、まったく無駄だったのに。伝統的な国単位で考えるこの感覚。私はこの点がヨーロッパ人らしくないと、無意識に違和感をもったのはではないだろうか。
私はEUの警察機構なんてほとんど全く知らないが、EUシェンゲン内の国を転々とすれば目くらましがかけられる、なんていう感覚をあまりもっていないのだーーということに初めて気づいた。今まで自覚がなかった。これは私が、国境を意識せずにつながっているこんにちの欧州大陸に住んで、無意識に体得していたものだ。

実際は前述のように、1万人以上の人が欧州内を逃げ回ったようだ。でも考えてみれば少ないかもしれない。意外と自分の国にいるほうが目立たなくて隠れやすいのかもしれない。
「移民やテロリストが国境なく勝手にやってくるから、もう嫌だ」という気持ちが高まっている人は多い。気持ちはわかる。でも、冷静に考えると意外とそうでもないのかもしれない。
国境がなくなった分、EU内の警察の連携は密であり、あっというまに足がついてしまう。
この前のベルリンのテロも、19日に起きて23日にはミラノで犯人が射殺された。たったの4日。あの時もはやいとは思ったが、テロなので全総力を挙げたにちがいないと漠然と思っていた。でも今回の事件はそういうわけではない。それなのにこの速さ。

昔は、「外国に脱出するのは大変だが、一度出てしまえばつかまりにくい」という考えだったかもしれないが、少なくとも今のEUは「EUシェンゲン内の外国に脱出するのは国内を移動するように簡単だが、外国だと思って移動すればするほど足がつきやすい」「EU内は外国にいようとも国内にいるかのように全部筒抜け」のかもしれない、と思いました。


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