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テロが起きてしまいました。その他メランションやつれづれ

あー。テロが起きてしまいました。
シャンゼリゼか。なるほど・・・。
エッフェル塔やルーブル美術館なども非常にシンボリックな場所だけど、あそこは「入場するところ」だから、すでに厳しい警備が敷かれている。シャンゼリゼって、ただの道(大通り)だものね・・・。
シャンゼリゼ通りは坂道で、一番上には凱旋門があるけど、周りは道路で渡れないので、警備はしやすい。今回テロが起きたのは、シャンゼリゼ通りの真ん中より下の方だったみたい。やはり、凱旋門に近いシャンゼリゼは、観光客も多いけど警備も厳しく、やりにくかったんだろうと思う。実際、ジョルジュ5駅より下の方がすぐに封鎖されたけど、シャルルドゴール・エトワール駅(凱旋門の一番近く、シャンゼリゼの一番上)は、少なくともすぐには封鎖はされなかったみたいなので。

やっぱりシャンゼリゼというインパクトは大きい。
ただ、一般市民や観光客が被害にあうテロじゃなくてよかった
治安当局は本当にがんばっている。ニースのような大勢の人が被害にあうテロは、起きにくくなっている。
亡くなった警官の人は、本当にお気の毒だと思う
大統領選に関して言えば、すべての候補が「テロは許せない、治安対策に力を入れる」といっているので、方針や政策の違いは特にない。

でも、やっぱり心理的な影響はある。
「ああいう人達は本当にうんざりだ。みんないなくなればいいのに」と思ってしまうけど、「みんな」って誰のこと? と自問自答する。
本当に「みんな」を排除しようとすれば、それはナチスである。ナチスの権力、ナチスの思想、ナチスの行動力がないとできない。そんなことできないのは、誰もがわかっている。指名手配犯を追い、疑わしい人物をできるだけマークするなんていうのは、もうとっくの昔にやっているのだから。

でも心の奥底で「してほしい」と願い、それを投票に反映しようとするのなら、それができる政治家はルペン父だったと思う。
FN国民戦線の創始者で、人種差別主義者。真性極右
今の党首のルペン娘には、そんな強さはない。
もし本当に事が起これば、彼女は声を荒らげて叫んでも、実際はびくついて震えるだろう。
メランション相手の討論程度でも、震えているんだから。
父親だったら、断固として行動する強さがあっただろうが。
あの人は弱いのだ。いざ国が本当に非常事態になっても、任せられるような人じゃない。
でも、そんなマイルドさがあるから、FNは「普通の党」と言われるようになり、支持を集めたのだ。
極右、極右と言われているけど、真性極右じゃない。
「まんなか」の位置は国によって違うので、日本からみたら、今のFNは極右ですらないかもしれない。

メランションに関しては、組織としてついているのは共産党。
共産党といっても、日本の共産党と似ていて、西側的。
弱くなって人数も激減しているといっても、組織力は日本と同じで大変強い。
ただし、フランスの共産党は、プロレタリア革命の「精神」だけはずっと濃く受け継いでいるように見える。
メランションの思想は「ドゴール的であり、共産主義的である」ということだ。

メランションは、移民系のフランス人に評判がいい。
特に南米系フランス人。
日本では共産主義というと、ソ連やその周りのイメージが強いけど、実際にはチェ・ゲバラじゃないけど、中南米でもすごく強かった。あとアフリカの一部も。
これらの共産主義の流れが、フランス(や欧州)には強く入ってきている。
そういう思想を持っている人、支持する人は、人数的にはスペインほど多くはないけど、一定数いる。
(スペインのポデモスも、この流れでしょう)。

そういえば、メランション支持にはアラブ系をあまり見ない印象だ。ノワール(黒人)はいるけれど。イスラム教というのは、歴史的には共産主義に対抗するもう一つの砦だったのかもしれない。そんなこと考えたことなかったけど。でも、貧しい地域では共産党や極左政党が強いから、実際にはアラブ系の支持者は多いのかもしれない。

あともう一つ、東側から来た系統のフランス人にも、メランションは結構評判がいいことに最近気づいた。東欧というよりも、もっと東。ウクライナとか旧ソ連に属していた国々の系統の人たち。


今回急速にメランションの支持が上向いたのは、本来なら社会党に入れる大きな勢力が、右往左往しているからだろう。マクロン支持に行った人は、もう動かないだろう。社会党に忠実でアモン支持に残っている人も動かない感じだ(ピケティもここに入る)。問題は、それ以外の人たち。

メランションは、主要5人のテレビ討論会の時、周りが自分の発言をするだけだったとき、一人だけ討論にしようと頑張っていた。これは結構好印象を与えた。
(ただ仕方ない感じもする。一人ひとりの発言時間が公平になるように、デジタルカウンターをが置かれている。どの候補者も自分のカウンターを見ていたのだろうから)。
あと、討論会のとき、SNSでテレビ局が同時進行で意見を集めたり、どの候補者がいいか投票を求めたりしていたとき、メランションがダントツ1位だった。熱狂的メランション支持者がSNSに張っているという感じだった。

メランションは、ドゴール的に「フランス第一」であり、EU離脱も辞さないといっても、彼のビジョンは共産主義的で、「世界中で人民に力を!」「人民よ、権力をとれ!」という感じである。そこが、同じ「フランス第一」でEU離脱でも、ルペンとはまったく違う。FNはどこまでも内向きである。「フランス第一」と叫び、移民排斥を叫ぶだけ。

ドゴールはフランスの孤立を恐れなかった(ただし、外交術も大変優れていた。だからこそ偉大だった)。そういうドゴール的強さをメランションには期待できても、ルペンにはできない。それが、ルペンの支持率が落ちてきて、メランションの支持率が上がってきた理由だと思う。それに、もともとああいう革命闘士的な人は、フランス人は好きだと思う。ただ、やっぱりあの共産主義っぽさはどうも、という人は多いだろう。

一番の重要な争点は、前にも書いたように、景気・失業・給料・年金・社会保障(様々な手当てや健康保険など)である。ただ、もう誰もが同じに見えてくる。
フランスは伝統的に、中道右派(シラク・サルコジなど)と中道左派社会党(ミッテラン・オランドなど)の二大政党だった。
「中道右派もダメだった。中道左派もダメだった。じゃあどうすればいい?」というのが今回の選挙である。前にも書いたけど。

オランドの人気はまったくなく、二大政党のかたわれ社会党支持者の層が浮遊している。マクロンに決めた人、社会党候補アモンを支持する人、これらはもう動かない。問題は残りである。この残りが今、あっちこっちに浮遊している。

マクロンは新しい政策をもっているように見える。そういう意味で期待値は高いだろう。彼は上位2人に残ると思う。働き盛りで、生活や仕事・年収も落ち着いている、いわばフランスを支えているような人々は、リッチになればなるほど中道右派が多いとはいえ、フランスの場合伝統的に社会党支持者も結構いる。あるいは、時によって中道左派社会党、時によって中道右派と変えていた、いわゆる「浮動票」の人達もものすごく多い。そういう人は、今回マクロンに行っているように見える。ミーティングに行ってみたが、支持者層(特に服装)を見るとわかる。

一方で、それでも社会党に忠実でアモン支持なのは、女性、若者、高齢者、知的左派が多かったと思う。これもミーティングに行ってみてそう思った。ピケティなんかはアモンの友達らしい。あの人、世界的に大成功した超有名人で、かなりリッチでしょうに。知的左派の中には、今回マクロン支持になった人は結構いると思う。それでも彼はバリバリの社会党支持なのは、骨の髄まで平等を尊ぶ、いかにもフランスにしかいなさそうな知的左派なんだなー、と思う(英国にはいないタイプ。アメリカには絶対いなさそう。ドイツは緑の党が強いし、旧東ドイツもあるので、また違うと思う)。あと、ピケティの「ユーロ圏議会構想」を実現するには、安定した大政党じゃないとダメ、アモンは支持してくれた、という計算もあるのかもしれないけど。

アモン自体の評判は悪くない。誠実そうという評価が高い。社会党候補になると誰もが思っていたバルス元首相を破ったのは、変化を望んだというのもあるだろうけど、アモン氏の実績と人柄に負うところが大きいと思う。それから、彼は、中道左派の中でも、かなり左である。オランドで失敗し、中道左派の中の「中」がマクロンで離脱しちゃったから、必然的にそういう人が選ばれたというのもあるだろう。戦略として、revenu universel (国民全員に約9万円を毎月支給)を恐れずがんがん主張すればよかったのにと、私なんかは思う。良い悪いではなく、信念に基づいた政策はひるまず声高に主張したほうがいいという理由。なんだかちょっと腰が引けたところがあったのは、反発も大きかったからか。

パリの街を歩いていると、極右二人のポスターは破かれていることが多い。「刑務所行け」などの悪口もある。マクロンのポスターには「ロスチャイルドにお問い合わせください」「ロスチャイルド.com」などという、おなじみの批判も描かれている事も。面白いのは、極右二人のポスターは悪口が書かれてびりびりに破かれていて、今はもう痕跡すらないという事が多いのに対し、マクロンやフィヨンは、たまに破かれていたり悪口が書かれていたりといったごく並の程度、左派の人たちのは、ごく並よりももっと手付かずのまま残っている、というケースが多い感じがする。左派に対しては、支持もしないが貶める理由も特にない、ということだろうか。
(アメリカなら貶める人はいるでしょうにね。共産主義っぽい臭いがするだけでヒステリーを起こす人がいる国だから)。

テロがなかったら、私は「フィヨンとマクロンが決戦投票」と言ってしまったかもしれないけどね・・・。
組織票はあなどれない。フィヨンは、スキャンダルにまみれたが、なんだかんだ言っても二大政党の1党の人である。暗めだけど、人品がある落ち着いた紳士に見える。それはアモンも同じ。今回は二大政党の候補者二人が、人品が感じられる紳士らしい風貌なのが面白い。サルコジVSセゴレーヌ、サルコジVSオランドの時と雰囲気が違う。腐ったと言えども二大政党は人材をもっているなあ、と感じた。(特に中道右派(共和党)は、サルコジのあのギラギラした感じにうんざりしていたのかもしれない)。

ただ、フィヨンやマクロンに関しては、キリスト教とライシテの問題がある。
今回ほどキリスト教が表に出てきた選挙戦は私は初めてだけど、メディアでもそう言っているので、おそらく特筆すべき新しい傾向なのだろう。あまりメディアでも表に大きく出ない問題ではあるけれど。

一方でメランションは、冬はいつも赤のマフラー、今は赤のネクタイをしている。
共産主義的、革命的だなあと、なんだかおかしい。
そういえば、ロートレックで有名なアーティスト、ブリュアン。
あの人も赤いマフラーをしていた。

スクリーンショット 2017-04-21 15.03.44.png

彼はブルジョワのお金持ちの家の出身だったけど、親がおちぶれて、学校中退。
宝石工芸なんかもしていたことあったけど、のちに芸術家になった。詩人であり、作家であり、シャンソニエ(キャバレーなどで風刺的な、あるいは滑稽なシャンソンや一口話をきかせる芸人・アーティスト)。
政治家として立候補したこともあり、そのときのスローガンが「人民(人々)の候補」「資本家財閥たちの敵は、この人間主義の詩人に投票するのだ」だった。共産主義的であり、フランス革命的である。

何度もいうけれど、EUは確かに大きな争点ではあるけれど、あまり関係ないと思う。
問題は、「もうあの人たちにうんざりだ。来てほしくない。我が国からいなくなってほしい」という人々の奥底の心情ではないかと思う。それが直にEU問題に結びつくかというと・・・違う感じがする。一応移民の流入はとまったし、フランスはなんだかんだ言っても豊かで社会保障もきちんとしている。ただ、直前にテロが起きてしまったのはどう影響するのか。どのみちナチスにはなれないのだ。なる必要もない、とどこまで冷静でいられるか。

前も書いたように、「どうせ第1回投票で決まる事はないのだ。批判票・心情だけで投票する」という人が多ければ、ルペンは上位2人に入って決戦投票に行く(そして落ちる)。「今回は本当に1回目から真剣に考えないとまずい」とより一層冷静になれば、ルペンは残らない。

シャンゼリゼのテロの影響は、どこにでるのだろうか。ルペンじゃなくてメランション有利になるかもしれない。あの人が候補者の中で一番、ドゴールばりの強さを感じさせるから。それとも影響は、実際にはあまりでないかもしれない(テロ慣れしてきてるから)。でも投票直前に、亡くなった警官をいたむ国のセレモニーか・・・。行うのは当然なんだけど・・・。うーん・・・。

ただこれは個人的な意見だけど、もし私に投票権があったなら、「あんな犯人や集団に、自分たちの国の最も大事な選挙・大統領選に影響を与えることができるなんて思われたくない。うぬぼれるな」と思い、彼らのテロは無視して、本当に自分の生活や国の問題解決、そして未来のために良いと思える候補者を選んで、投票を決めると思う。「テロは卑劣ではあるが、テロを起こしたくなるようなことを、フランスは外国で散々やってきた」のはわかっている。それでも、毅然としていたいと思うだろう。
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